お屠蘇(とそ)の意味と作法、作り方

お屠蘇(とそ)の意味と作法、作り方

元旦にいただくお酒「お屠蘇」。作法を知らないとちょっと恥ずかしい思いをしますよね。お屠蘇とはそもそもどういう意味なのでしょうか。

お屠蘇の由来と意味は

お正月に無病長寿を願って飲まれるお屠蘇の由来は、「蘇」という悪鬼を屠るという説や、邪を屠り生気を「蘇生」させるという説があります。現代ではお屠蘇を飲むというと、単に日本酒を飲むことを指す場合もありますが、本来、お屠蘇とは「屠蘇散(とそさん)」または「屠蘇延命散」と呼ばれる5〜10種類の材料を配合したようなものを漬け込んだお酒のことで、唐の時代の中国より伝えられ、平安貴族の正月行事に使われていたそうです。江戸時代には一般庶民の口にも入るようになるまで広まりました。

屠蘇散の中身

原材料説明
白朮(ビャクジュツ)キク科オケラまたはオオバオケラの根
山椒(サンショウ)サンショウの実
桔梗(キキョウ)キキョウの根
肉桂(ニッケイ)ニッケイの樹皮、シナモン
防風(ボウフウ)セリ科ボウフウの根
陳皮(チンピ)みかんの皮

お屠蘇の作り方

現代のお正月では日本酒がそのまま使われることが多いようですが、機会があればご家庭で作ってみてはいかがでしょうか?上記のような原材料を一から用意するのは大変ですが、屠蘇散としてまとまったものが売っているのでそれを使えば簡単に作ることができます。

材料
  • 屠蘇散ドラッグストアやスーパーなどで1包200円前後で手に入ります。年末に日本酒や本みりんを買うと、屠蘇散が付いてくることもあります。
  • お好みの日本酒をご用意ください。
  • 本みりん料理用のみりんだと塩分が入っている場合があるので、本みりんを使います。
作り方
  1. 酒と本みりん合計300mlに、屠蘇散を浸します。酒を多くすると辛口な仕上がりに、本みりんの割合が多いと 甘口でまろやかな味わいになります。 素材が勝負。上質な本みりんや日本酒を選ぶことが肝要です。
  2. 抽出が終わったら屠蘇散を取り出します。屠蘇散の説明書きを参考にし、出来上がり時間から逆算して作り始めてください。 抽出時間が長すぎると、濁ったり沈殿物が出たりすることがあります。 抽出時間は、平均して5時間〜8時間が一般的です。

お屠蘇の作法

飲む前に済ませておきたいこと

お屠蘇を飲む前には必ず若水(元日の朝に汲んだ、その年初めての水の意)で手を清め、神棚や仏壇を拝み、家族が揃ったら新年のあいさつを済ませます。お屠蘇はおせちを食べる前にいただきます。

飲み方について

正式には屠蘇器という朱塗りのお銚子と三段重ねの盃でいただくのですが、現代の一般家庭にはなかなか無いものだと思いますので、ご家庭にある酒器の中で一番お正月にふさわしいものをお使いください。

飲むときは家族全員が東の方角を向きます。飲む人の右側から注ぎ、飲む順番は年少者から年長者へと進めていきます。これは若者の活発な生気を年長者が飲み取るという意味合いと、毒見の名残だと言われています。本来は三段重ねの盃で1杯ずつ3回に分けて飲みますが、略式では1つの盃に3回に分けて入れ、3回に分けて飲み干します。

厄年の人は厄年以外の人に厄を祓う力を分けてもらうため、最後に飲みます。

飲むときには、「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱えます。

一般的な作法や飲み方は上記の通りですが、地域や各家庭により差があります。 飲む順番については、年長者の英知を若人に分け与えるという意味で、年長者から先に飲む場合もあります。また、三段重ねの盃については、一人で三つとも使うのではなく、大を父親、中を母親、小を子供というように分けて使うこともあります。

お屠蘇(とそ)の意味と作法、作り方のイメージ画像

未成年がお屠蘇を飲むのはNG?

未成年者飲酒禁止法によるとお屠蘇も雑酒になります。子供用にはアルコールを飛ばしたみりんで作るか、盃を傾け飲んだふりをするだけでも充分です。なにせ「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」ですから、飲めなかったとしても大丈夫です。実践することももちろん大切なのですが、お屠蘇の由来や、どういった意味のある伝統行事なのかを伝えてあげることも同じく大切なことです。

また、未成年に限らず、年始回りや初詣などに車で出かける予定がある場合は、運転手の方も口をつけずに、飲んだふりをするだけにしておきましょう。

お屠蘇のトリビア

各家庭に井戸があった頃は、お屠蘇を作る際に屠蘇散を絹の赤い三角形の袋に入れて井戸に吊るしてから酒やみりんに浸したそうです。

お屠蘇を作った後の屠蘇散も捨てずに保管しておき、松の内が明けてから井戸に投げ入れたといいます。屠蘇散を投げ入れた水を飲むことで、一代の間は無病息災でいられると信じられていました。