- 斎藤:
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はじめまして、産婦人科医の斎藤と申します。今日はこのようなお時間をいただき
ありがとうございます。私は、自分の
子どもが1歳でまだ小さいということもあり、震災後から放射性物質の自主検査についていろいろと調べてきたのです
が、いい加減なところも多いと感じています。ぜひ今日はOisixさんの取り組みについて勉強させていただければと思っ
ていますのでよろしくお願いいたします。
- 冨士:
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はじめまして、オイシックスの品質管理部の冨士と申します。こちらこそ、今日はありがとうございます。当社は、震災直後から取り組みを実施し、今までに9万検体以上の検査を実施してきておりますので、ぜひともお役に立てればうれしいです。逆に、当社では子どもたちの健康面への影響という観点で、どのような対策が必要か?などについてはぜひともご意見をいただければと思っております。
- 斎藤:
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では、率直な質問から(笑)。Oisixさんの検査は、どんな取組みをしていますか?網羅的でなかったり、基準があやしかったりしたら、やっていても意味がないとおもうのですが?
- 冨士:
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対象商品については出荷前にロット毎抜き取りの検査をしています。 検査は鉛遮蔽を施しNaIγ線スペクトロメトリを用いて行っています。(画面をみせながら図示)
- 斎藤:
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でもこれ、出荷前に検査することは現実的なんですか?
- 冨士:
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正直に申し上げればとても大変です。生鮮食品の場合、入荷〜出荷までの時間はそれほど長くはありません。入荷後、夜間を含めて出荷までの時間が勝負になります。しかしながら、お客様に安心してめしあがっていただくために、出荷前の検査を続けております。
- 斎藤:
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確かに 検査する際には粉砕してしまうので全量を検査できない点においては 他社と同じでしょう。しかし出荷前に検査をするということはとても大切だと考えます。汚染されたものを出荷しないという、その徹底した努力には感服します
- 斎藤:
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さらに聞きたいのですが、オイシックスでは検出実績はないのですか?全くないのであれば、そういう省力化みたいなものは企業としてはしかたがないのかなとも思うのですが。
- 冨士:
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今まで公開してはこなかったのですが、ある程度の検出はありました。震災直後の関東圏の葉物の数値はかなり高い数値を示し、出荷できませんでした。また、最近でも検出数はすくないですが、きのこや茶、一部の野菜類、魚類からの検出が認められるため、商品を厳選しております。私たちとしては気が抜けない状態であることは変わっていないなといった印象です。
- 斎藤:
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それであれば、事前の検査は必須だと思います。他社のときどき抜き取り&後日開示 の検査方法については意味があるのかわからないし、安全性のためのPRに過ぎないと感じます。せっかく 実効性のある検査体制を敷いているのであれば、それを継続すべきです。
- 斎藤:
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追加で聞きたいのですが、検出される地域の限界みたいなもの(例えば茨城以北青森以南)はあるのでしょうか?地域は把握していますか?
- 冨士:
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風評被害に繋がるおそれがあるため、今までは公開してきておりませんでしたが、検査を毎日実施していますので、把握しています。地域的には、やはり、国より出荷制限が出た南東北や北関東は検出事例が多く、出荷も止まりました。
しかし、同じ町内でも検出される畑と検出されない畑があり、検出される地域だからといって全ての畑から検出されるとは限りません。また、販売した商品ではありませんが、関東、東北以外からの商品でも高い値を検出したこともあります。産地のみを判断基準にできにくい状況と感じています。
継続した検査を行い、産地に関わらず、問題のないものはしっかりと応援していきたいと考えております。
- 斎藤:
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関東、東北以外からも検出があったとは初耳です。 そのような点を考慮しても やはり検出した実績は公開した方が、第三者からみると安心感があります。私も検出したデータの存在を確認するまでは、正直検査体制に信頼を寄せることができませんでした。何らかの形で公開されることを勧めます。
- 冨士:
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今までお客さまに安全であるものをお届けすることのみに注力してまいりましたが、 情報公開についても考えて行きたいと思います。お知らせしないことに対するお客さまの不安感について思いをめぐらせて来れなかったことは反省すべきかもしれません。
- 斎藤:
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安全を担保できる仕組みになっていることを もう少しアピール しても良いのではと感じます。
- 冨士:
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話は変わりますが、日本の基準について伺いたいのですが、現在の基準は 医師の観点から妥当と感じてらっしゃいますか?お客さまからも様々なご意見があり独自の基準を設けようと考えたこともあるのですが、臨床試験などを通じた検証ができず、また文献も少ないので断念した経緯があります。
- 斎藤:
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少なければ少ないほどよいというものでもありません。天然の放射線核種としてカリウム40は人間にも数10Bq/kg程度含まれています。また、ラドン温泉など昔から放射線を治療に使っていた例もあります。僕も関わっている放射線対策のあつまりも、子どもも含め5-10Bq/kg以下であれば、後で後悔する事はないのではないか、と話し合われています。とはいえ、原子炉内部から外気に放たれたものを摂取したくないという気持ちは一般の方には強いと思います。
国の基準値は諸外国と比べても低いレベルです。EUの基準は、食べる物が全て上限ギリギリではなく、放射性物質の含有が多い食べものを食べるだろうが、ある一定の割合で含有が低いもの食べているという前提で設定されています。だからEUの基準値上限の物ばかり食べ続けることがあれば、健康を害する可能性があります。地産地消の多い日本の場合は、上限ギリギリの物を食べ続ける可能性が高い。という事も基準が低い理由のひとつと言えます。
重要なのは、消費者が食べるものに含まれる放射性物質の量を知ることができる、選ぶ事ができる。という事です。情報がないことで結果、選択の自由が制限された状態にあるということは、近代国家においては不自然なことです。
- 冨士:
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当社では、国の新基準を採用するとともに、検出限界概ね5〜10Bq/kgとなる検査を追加で実施し、検出することがなかった「ベビー&キッズ商品」という商品をご用意して お客様にお選びいただけるようにしています。
- 斎藤:
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それはいいかもしれませんね。本当は全部の数値まで公開してもらいたいところですが(笑)。
でも科学者としての視点からいわせていただいても、利益を追求しなくてはならない民間企業が、よくぞそこまでご自身と提携生産者さんに厳しくできるものだと、感服しています。
- 斎藤:
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下世話な話かもしれませんが、コストって相当かかっているのではないですか? 検査体制のお話を伺っても、大変だなと思います。オイシックスさんは、消費者の立場に立って最善を尽くされています。
- 冨士:
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その部分は企業努力でなんとかするしかないと思っています。食べ物は安全なのが当たり前であり、不安を感じつつする食事ほど悲しいものは無いと思っています。当社はこの検査を行うことにより初めて商品としてお客さまにお届けできるレベルに到達すると考えています。また、継続的に検査を実施することで、安心できるものをご紹介することで、風評被害に悩む生産者の方も応援できればとおもっています。
- 斎藤:
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その消費者と生産者の方の両方をおもう気持ちは、何かの形で返ってきますよ。
- 冨士:
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当社は この取組みが万全とは考えていません。見逃しているポイントやもっと出来ることは有りませんでしょうか?ご指摘いただけるとありがたいです。
- 斎藤:
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このまえ学会でご一緒した、デトックスで有名な先生も、オイシックスを利用していましたね(笑)
ベビー&キッズなどの取組みはたいへんよいと思います。そうですね、栄養学もかなり進歩してきているので、せっかく素材がすばらしいのだから、メニュー提案も含めた「セット」を定期でおくってくれたらいいかな、皆さんも興味あるんじゃないかな?ちょっと水洗いするだけでジュースにできるオーガニック野菜セットの定期便なんてあったら、僕がほしいですね。
- 冨士:
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検討したいと思います。有難うございました。