産婦人科女医、医学博士、性科学者で2児の母。現役産婦人科医として都内の病院で診療を続けながら、メディアでは様々な女性の悩み、妊娠・出産などについての積極的な啓蒙活動を行っている。『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』(メタモル出版)など著書多数。
産後2〜10日目ぐらいに、わけもなく涙が出たり、家族や友人の何気ない言葉に傷ついたり、一時的に気持ちが落ち込むことがあります。これは出産と同時にこれまで分泌していた女性ホルモンが急に減少するせいで、マタニティーブルー※1と言います。 もちろん、分娩やなれない授乳、自宅に帰ってからの不安なども要因のひとつで、およそ30〜50%の産婦さんがなりますが、ホルモンバランスが落ち着いてくると徐々に治まり、2週間程度で消失することが多いので安心してくださいね。 私の場合、産後10日前後があきらかに変だったと思います。知人の子が大きく育っているのを知って取り乱したり、社会から孤立したような疎外感を感じて不安になったりしていました。実家で母や妹のサポートがあったのに、それでもマタニティーブルーになりました。時々SNSやブログをのぞいて少しだけ近況を書いたり、友人のメッセージを読んだりすることで比較的疎外感や不安は和らいでいたと思いますが、一番救われたのは、電話で愚痴を言える友人でした。 マタニティーブルーが治まった後も、子育て中に疎外感を感じたり、憂鬱になったりすることは多いです。だからこそ、出産前に少しでも友人との人間関係を構築しなおすことをおすすめします。頼れる人、笑わせてくれる人、愚痴を聞いてくれる人など、家族や友人、地域の方、専門家にいっぱい甘えて、助けてもらいましょう。 また、マタニティーブルーの症状が長期間にわたって持続し、産後うつ病に移行することもあるため※2ひとりで頑張りすぎずに周りに頼るようにしましょう。赤ちゃんや自分の体について心配なことがあったら、地域の子育て支援センターや保健師、医師などに相談するという手段があることを覚えておいてくださいね。
※1正式名称はマタニティーブルース
※2公益社団法人日本産科婦人科学会 日産婦誌54巻7号12.産褥異常の管理と治療
産後にママのメンタルが安定するかどうか、最もカギを握っているのはパパです。ひとりで頑張りすぎずに周りに頼ってラクをしましょう。ご主人の協力が無ければ非常に大変ですので、「育児接待」でご主人をイクメンにしてみましょう。男性の育児参加はどうしても「おいしいところどり」になりがちです。だからこそそれを逆手にとって育児接待と考え、ちょっとでも育児に参加してくれた時には、「〇〇ちゃん喜んでる〜〇○ちゃんはパパが好きなんだね!」とパパの気持ちを盛り上げておけば、パパも楽しめるようになります。その結果、喜んで育児を手伝ってくれるようになれば、育児接待の価千金です。ちょっとしたことでも感謝をしてご主人に手伝ってもらえるようにしましょう。
育児で大変な時に、色々言われると誰だってイライラしてしまうものです。マタニティーブルーとは異なりますので安心してくださいね。育児で大切なことは「情報収集力」よりも「スルーする力」です。周りの人の発言に目くじらを立てていてはこっちの身が持ちませんよ。にっこり笑って、内容はスルーしてしまいましょう。 例えば、抱っこばかりしていると「抱き癖がつく」や乳児期の子育てで「思春期の態度が決まる」などと言っている方がいますが、そんなことはありませんので安心してくださいね。赤ちゃんにとって一番幸せなことは、ママがいつもニコニコしてやさしく抱っこしてくれることです。そのためにもママ自身が心に余裕をもっていることが大切ですね。